2016年4月29日に映画『スキャナー 記憶のカケラをよむ男』が全国で公開となります。

モノに残された人の想いをよむ主人公が、その特殊能力を生かして、失踪したピアノの先生を探すというストーリーです。

大切な人への想いをつなぐ物語。

今回は、映画監督の金子修介さんに、女優、加藤都さんがお話を伺います。

加藤さんは女優としての活動と同時に、『今は亡きあの人へ伝えたい言葉』に参画する株式会社 静和 の代表として、終活関連セミナーの開催なども行っています。


色んなものが見えすぎると、人間は醜いと感じちゃう。

でも、最後には人間は美しいというふうになれる。

それが亡くなった方への想い、「伝えたい言葉」なんです。

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加藤さん:私は今、『今は亡きあの人へ伝えたい言葉』という、亡くなった方への想いをお手紙に綴って送りましょうというプロジェクトに参画しています。

全国からお寄せいただいたお手紙の中から、選りすぐって、一冊の本にしています。

金子監督の最新作『スキャナー 記憶のカケラをよむ男』も、やはりそうした「想い」とテーマにされているんですか?

 

金子監督:そうですね。

この『今は亡きあの人に伝えたい言葉』には非常に親和性があるというか。でも、それを言っちゃうとネタバレになってしまうので、詳しくは言えませんが……。

この物語は、人の思いや記憶とかはモノに宿るということを最初に云い切っちゃうんです。

野村萬斎さんの演じる、仙石という人。この人に、モノに宿った想いをよみ取れるという能力があるんです。

かつて、自分のその能力を利用して漫才をやろうともくろんだんですけど、うまくいかなくて。引退し、マンションの管理人になって隠れて暮らしています。

そこに杉咲花ちゃんが演じる女子高生が、「思念がよめるんだったら、先生を探してください」って、行方不明になったピアノの先生の捜索を依頼しに来るんです。

「そんなことはできない」って断るんですけど、楽譜とか爪やすりとかいろいろ持ってくる。で、触ったら見えちゃうんです。美人の先生、木村文乃さんが、「ワっ」と見えてしまう。

それで探さざるを得なくなって、そこから元相方役の宮迫博之さんと一緒に、連続殺人に巻き込まれていくというお話です。

 

加藤さん:遺留品に残っている思念というのは、亡くなった方からのメッセージということですか?

 

金子監督:必ずしも亡くなった人の遺留品に限るものではありません。

失踪した先生は、ピアノを教えている生徒に対して、想いがある。譜面に触れば、「あなたは才能があるのよ」とか言っていたのはわかる。けれど、仙石が譜面を触っている瞬間、先生が生きているかどうかはわからない。

 

加藤さん:原作はあるんですか?

 

金子監督:映画オリジナルです。

今回、初めて現代劇に挑戦する野村さんがどんなお芝居をするのかを考えながら、ストーリーを作っています。

DEATH NOTE』も漫画が原作でしたが、最近はほとんどの映画が原作付きのものになってきています。映画オリジナルというのは珍しい。

東映でも四年ぶりです。

その前は、森田芳光監督の『僕達急行 A列車で行こう』というのがあります。それを撮られて後、森田監督は亡くなられたんですけど。

 

加藤さん:若くしてお亡くなりになっていますね。

 

金子監督:そういう意味では僕も、森田さんに対する想いっていうのはあります。

僕は、森田さんの助監督を何本もやっているので。

森田さんの代表作である『家族ゲーム』というのにチーフ助監督で付いていました。そのあと監督に昇進したんですけど、その時に森田さんが監督昇進祝いというのをやってくれたんです。まあ、新宿で一杯飲んだだけなんですけど(笑)

 

 


亡くなった人への想いを切なく感じて、それでも、前に向かって生きていく。

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金子監督:僕がお世話になったり、恩義を感じたり、師匠というような人、親も含めて、もう全員亡くなってしまいました。先輩とか、両親とか、小学校の先生とか。本当に強烈な指導や、影響を受けた人はみんな死んじゃった。森田監督が最後くらいかな?

ところが今、自分がいる。

淋しさというか、やっぱり何か、叱られたいという心地はある。

 

でも、いつもはあまり、「死」を意識して映画を作ることはないです。

たまたま、この『スキャナー』では最後に、亡くなった人への想いを切なく感じて、それでも、前に向かって生きていくという姿を撮っていますが。

 

この仙石という人は、色んなものが見えすぎちゃって、人間は醜い、いやだと思って隠遁生活をしている。でも、最後には人間は美しいというふうになる、そういうドラマなんです。それが亡くなった方への想い、「伝えたい言葉」なんです。

でも伝えられないじゃないですか? そういう切なさや想いって。

だからこの仙石は、映画の中でその言葉を言うんです。

 

加藤さん:すごい、『今は亡きあの人へ伝えたい言葉』にとても近いように感じます。嬉しいですね。

監督には、ラストキャバレーでヒロインに抜擢していただき、これまで何度か作品に出演させていただく中で、「金子監督は『死』にこだわりを持っていらっしゃるのかな?」と感じていましたが、そうではないんですね。

 

金子監督:僕は、死にこだわるというよりは、生にこだわっています。

確かに、『DEATH NOTE』には死神が出てきましたけれど。

 

あれは、ノートに人の名前を書くとその人は死ぬという設定です。

それで藤原竜也さんに実際に書いてもらって。

まあ、あまりうまくはない字なんですけど。それはそれで、すごく批判されたんです。

「天才がどうしてあんなに字が下手なんだ?」って。でも、僕は天才の方が字は下手だと思っています。

 

で、映画のセットで、藤原君が人の名前を書いていくんです、デスノートに。それをカメラに撮っている。それだけで、気持ちが悪いんです。

 

映画は、絵を撮るだけではなく、その絵の中に込められた意味を撮る。感情を撮る。そういう意味でいくと、ノートに名前を書いているシーンというのは、その人が亡くなるって確定するシーンなわけです。

死んでいく人の名前を書いているというだけのシーン。これは撮っていて非常に嫌な感じがしました。

 

加藤さん:わかる気がします。名前だけを書いたらすぐに亡くなっちゃうんですよね。映画としてみれば面白い設定ですけれど、怖い感じはしますね。

『咬みつきたい』は、私も緒方拳さんと共演させていただききましたが、ドラキュラとかが出ない、ホラーじゃない作品でもお祓いはしていますか?

 

金子監督:お祓いは必ずします。お祓いをやらないで撮ると、事故があったりした時に「お祓いをしなかったからだ」と言ったりします。

映画の撮影には多くの人が関わりますので、たくさんの人の気持ちを一つにするという意味もあるんですけどね。

 


遺された人は、故人から伝えられたものをさらに、その先まで伝えていく。

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加藤さん:『今は亡きあの人へ伝えたい言葉』で寄せられたお手紙も、先日、お彼岸でお焚き上げをしてもらったんです。今、第7回目の募集をしていますが、明るいお手紙もあれば、ちょっと重いお手紙もあります。泣けるお手紙も。いろんなお手紙があります。

亡くなった人への想いって、本当に人それぞれなんだなって思います。

ところで、金子監督ご自身では、死生観というか、亡くなるってどういうことだとお考えになりますか?

 

金子監督:やはり、無になるということしか、ないかな? 僕の場合は……。

存在は無になると思っているから、言葉や、作品を残したいと思うのかもしれません。死後の世界に何かが残っているという風に、思いたいんだけど、思えない。自分がね。

モノづくりをするとか、もの書きをするという人には割と、共通の思いなのではないかなと思います。

 

加藤さん:作品に魂を込めて、後世に残したいという感じですか?

 

金子監督:何かを作るということは、おそらく、そういうことでしょう。

今の想いが映画に伝わって、残っていってほしいと願うわけです。けれど、でもそれが未来永劫、残るとは限らない。でも、残ってほしいと思いつつ、作ったり、しているんじゃないかな?

 

私の母は画家なんです。切り絵をやっていたんです。

それで、残った絵はいっぱいあるんですけど。で、遺言で「絵は、希望する人に渡して、希望がない絵に関しては焼却してほしい」という遺言があったのですが、それはできない。

焼却なんてできないって、我々子どもは思っちゃう。

レンタル倉庫を借りて保管していますが、それをどうするべきか、我々、私と弟は今、悩んでるんです。

 

加藤さん:私も母親の手紙があります。生前にほとんど捨ててしまっているので、数はそれほどはないんですけれど、絶対に捨てない手紙があります。

捨てるに捨てられないですよね。

 

特に書かれたものというのは、その人の想いというのがありますから。書いた人よりも、受け取った遺族というか、遺された人の方がむしろ、捨てられないという風に思います。

本人は「捨てても良いよ」と言ったとしても。喪家さんなんかも、例えば親が遺していたアルバムが捨てられなくて困るといった話があります。

 

金子監督:まさに、今回の映画もそうなんですが、皆、結論が出ない想いを抱きながら死んでいくというか。で、遺された人は、故人から伝えられたものをさらに、その先まで伝えていく。

 

加藤さん:私も終活に携わって仕事をしていると、自分自身、最終的にどうしようかなということは、考えますね。

エンディングノートを書いていても、手が止まるところもあるんですけど。こういうのどうしようかなって考えます。いつどうなるか、わからないでしょ? 人間って別に、若いから死なないわけじゃないですし。

金子監督は、終活とか何かやってらっしゃるんですか?

 

金子監督:何もやってないですけど、まあ、考えることはありますね。

だから、要するに、「どうするんだろう?」って(笑)。

「どうするんろう?」って考えて、でも「どうする」って具体的なところまでは考えてない。準備をするというところまで、まだ踏み切れない。それがいつ、そうなるかっていうのか、わからないけれど。

 


「あの人、こうだった」って笑って、で、泣けるっていう。お葬式はそういうもんです。

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加藤さん:もしも、監督ご自身がご自身のお葬式をプロデュースするとしたら、こんな演出にしたいとか、ありますか?

 

金子監督:あまりお経は読んでほしくないですかね。

 

どうしてそう思うのかな? と考えると、お経はお釈迦様のありがたい言葉が、その意味ではなく、音でしか伝わっていない。それが、僕の大きな疑問だからです。

お釈迦様の「これはこうするといいんだよ」とおっしゃったことを、日本語に訳して伝えればいいものを、音で伝えている。

もちろん、教養のある人は、そこから、漢字を想起して漢文を頭に浮かべて意味が分かるという人もいるのかもしれない。でも、そんな教養のある人だけのためにお葬式でお経を読むとは思わない。

調べれば、言っている内容は「なるほど」とは思いますけれどね。

 

加藤さん:お葬式の場でお経の意味を調べている余裕はないでしょうしね。

 

金子監督:だからまあ、もしも自分のお葬式をプロデュースをするのであれば、お経はないほうがいいかなと。

あとは、にこやかな写真を並べてほしいです。

 

加藤さん:やっぱり、明るくですね? たぶん、監督のカラーはそうかもしれません。

 

金子監督:でも、ちょっとは泣いてほしい。笑いながら。お葬式はそういうもんです。笑って。「あの人、こうだった」って笑って、で、泣けるっていう。

 

加藤さん:映画を見終わった後、楽しかったねって帰るのと、同じですか? お葬式も「いいお葬式だったね」って。

 

金子監督:いや、それは……。

でも、本当は、お葬式は自分でやるもんじゃないですよ。遺された家族がやるものです。私の父親は、「どっかに散骨してくれればいい」って言ってたんですが、それって遺族にとっては逆に大変じゃないですか?

でも、最近になって、父がそういうことを言った理由が、なんとなくわかってきたんですよ。

父親は大工の末っ子で、お墓がなかったんです。で、父が他界したとき、本来の金子家のお墓には入れないということが分かって。それで、「映画人墓碑の会」というのがあって、そこに納骨しました。

 

加藤さん:「映画人墓碑の会」って、どこにあるんですか?

 

金子監督:墨田区の鐘ヶ淵にある多聞寺の中にあります。そこに、「映画人墓碑の会」という団体で、共同のお墓をつくっています。たくさんの映画人の名前が、墓碑の裏に刻まれています。

僕が映画人であるということで、納骨しました。

でも、父もいろいろな労働運動、映画運動をやっていたので。戦後の文化の中では映画の関係者も結構知り合いがいてですね、墓碑の会の人たちも父のことを知っています。ですから、父自身も映画と全く無関係ということではありません。

今、両親ともここで眠っています。

 

加藤さん:なかなか一般の人は知らないですよね。監督も、もしもの時はこちらに?

 

金子監督:そうですね。でもうちの奥さんはどうかな? どう思う? って聞けないなあ……。

 

加藤さん:なかなか聞けないですよね。そういう話って。家族でそういう話って意外とできないですよね。でも監督はもしもの時、どうしたいですか? たとえば最後に何か食べたいものはありますか?

 

金子監督:そうだなあ、どうしたいかって言えば、子供に会って……。食べたいものは、目玉焼きと納豆かな。

 

加藤さん:シンプルですね。でも私も最後に食べたいのはお米です。海外に行く時と同じような感じかな? 私はお米を持って行って、ポータブルの炊飯器も持っていくんです。それくらいご飯が好き。だから最後もお米が食べたいと思うと思います。

でも、最後の晩餐で「すごい肉が食べたい」という人は意外と少ないかもしれませんね。それよりも、だれが作った料理かとかですかね?

 

金子監督:自分で作るしかないという感じもするけど。シチュエーションンによりますよね。こういう質問をされて、どういうシチュエーションを思い浮かべるかということじゃないかな。

 

加藤さん:監督はどういうシチュエーションを思い浮かべましたか?

 

金子監督:なんか、そこに行ったら必ず死ぬという場所に赴くんですよね。それを黙って、行くって感じかな。

 

加藤さん:こんな映画が撮りたいとか、最後に。そういうのってないですか?

 

金子監督:死と引き換えに、すべてが自由にできるという保証があれば、「ヴィーナスの誕生」かな?

ボッティチェリの絵画にあるように、貝が開いて、誕生するのはどうかな?

……でもそれを実現するためには、いろいろと準備が必要なんですよね。

 

加藤さん:そういう現実的な話じゃなくて!(笑)

でも、監督の『スキャナー』楽しそうですね。『今は亡きあの人に伝えたい言葉』とつながる想いもたくさんありそうですし、ぜひ観に行きますね。

本日はお忙しいところ、本当にありがとうございました。

 


 

『スキャナー 記憶のカケラをよむ男』

2016年4月29日(金・祝)公開

【出演】
野村萬斎 宮迫博之
安田章大 杉咲 花・木村文乃・ちすん 梶原 善
福本愛菜 岩田さゆり 北島美香 峯村リエ 嶋田久作
風間杜夫 高畑淳子

【脚本】
古沢良太

【監督】
金子修介

公式サイトはこちら⇒ http://www.scanner-movie.jp/

 

 

金子修介

映画監督
1978年、東京学芸大学卒業、助監督として日活入社。
怪獣映画から話題の映画まで幅広い作品を監督する。1995年「ガメラ大怪獣空中決戦」はブルーリボン賞監督賞を受賞。1996年「ガメラ2レギオン襲来」は第17回日本SF大賞を受賞。 1997年「学校の怪談3」、 2001年「ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃」、2005年「あずみ2」など数々の話題作を生み出す。2006年『DEATH NOTE』は邦画史上初の前・後編の連続公開を行う。
2016年4月29日には、最新作『スキャナー 記憶のカケラをよむ男』が公開予定。

 

 

加藤 都

女優、株式会社 静和 代表取締役
東京都新宿区出身。
高等学校在学中から、雑誌などの執筆を始める。さらにTBSドラマ「毎度おさわがせします」レギュラー、映画などに出演。映画の企画、執筆、プロデュースも同時に始める。『ラストキャバレー』主演ほか、金子修介監督の作品にも多数出演、中国、韓国のドラマにも出演している。
心理学に興味を持ち、カウンセラーとして、雑誌、新聞などでも活躍。最近は、お寺に樹木葬を紹介するパートナー事業の展開や、「終括コンシェルジュ」として、エンディングノート書き方セミナーも開催している。

 

 


※本記事は鎌倉新書が運営する「いい葬儀マガジン」記事を再編集して掲載しております。