「お墓の承継者がいなくなった」「高齢になり、先祖代々の墓を管理していくことが難しくなった」「お墓が遠方にあり、なかなかお墓参りに行けない」――。少子化が進み、代々受け継がれてきたお墓の維持・継承に頭を悩ませる人が増えています。

たとえ、承継者がいても、「重荷を背負わせるようで、先祖の墓を守れとは言いにくい」と躊躇したり、子や孫が夫婦墓を望み代々墓を敬遠したりと、「お墓は承継するもの」という従来の常識を持ち続ける人は少なくなってきています。また、今後ますます少子化が進んでいけば、「子孫が墓を継ぎ、管理する」という旧来の常識が成り立たなくなっていくことが危惧されることから、無縁墓を増やさないための合理的な戦略として「墓じまい」が注目されています。2016年、「墓じまい」は大きく加速し始めました。2016年に新しく見られた変化についてまとめます。

「墓じまい」増加による、解体サービスの差別化

奈良県橿原市に居を構える株式会社美匠は、安心・確実な墓石の解体・回収・リサイクル処分にいち早く取り組み実績を残しています。同社では、「真心をこめたお付き合いを通じ、コンプライアンスを徹底し、社会に貢献する」ことを心情とすることで、これまで時折見られたような、使われていない墓石が放置されているといった状態をなくしています。これまで以上に企業倫理が問われるようになってきているなか、後片付けにも適正な処理がもとめられています。

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放置無縁墓撤去前

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放置無縁墓撤去後

寺院が取り組む「永代供養墓」づくり

東京都港区の有限会社川本商店は、旧来から営んでいる寺院を、「みんなが集まるお寺=みんてら」へと変貌させています。霊園、永代供養墓、納骨堂の設計からデザイン、開発に至るすべての工程を担い、消費者のニーズと寺院の想いを融合させました。永代供養墓の建立についても、これを寺院の核として「母体である寺院の活性化を促すにはどうすべきか」という考えのもと取り組んでいます。血縁が途絶えても、お墓そのものを守っていけるシステムです。永代供養墓は宗教法人がより主体性をもって取り組む事例が多く、寺院の運営改善とセットになった永代供養墓の経営は今後より重視されていくことになるでしょう。

%e5%90%8d%e7%a7%b0%e6%9c%aa%e8%a8%ad%e5%ae%9a3いかに石が素敵に見えるかを考えたタイプ

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曲線が生かされたダイナミックなデザインの「納骨堂」

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石の素材感が目を惹く永代供養墓

 

「自動搬送式納骨堂」は、観光地とのタイアップなどが新しい切り口に

東京、名古屋、大阪、福岡などの大都市圏ではひきつづき「自動搬送式納骨堂」の建立が続いています。天候に左右されず参拝でき、夜も遅くまで開館している施設もあるので、仕事帰りに寄ることもできる利便性が受けています。2016年春にオープンした「天空陵苑」は、観光スポット浅草からわずか8分程の好立地。同陵苑では、雑誌風のガイドブックを制作して、観光のついでに見学をする、という行動を提案することで、ライト層の需要を掘り起こしています。

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物件からはスカイツリーを望むことができる

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天空陵苑の制作した観光リーフレット「TENKU」

 

2016年、伝統をかたくなに継承しているかに見える墓も、時代のニーズを鋭く汲み取るフロント・ランナーたちの手に掛かり、さまざまな形態に変容してきています。まだまだこれからも色々なお墓が生まれ、選択肢が増えていくと思いますが、遺族が故人を敬い祀るという思いに変わりはありません。日本人は初詣に始まり、クリスマスやハロウィンなど様々な風習を取り入れてきました。埋葬も形を変えながら、承継され続けていくことになるのでしょう。